より魅力的なまちづくりの原点がここにある。

#1 梅田一丁目一番地計画

橋本 武士

2000年入社
阪急阪神不動産(株) うめきた事業部うめきたグループ/課長

阪神電気鉄道(株)に入社後、同社技術部を経て不動産開発部門に異動。エキーマ今津、香櫨館、武庫川団地の駅前開発の計画策定・実施に従事した後、阪急阪神ビルマネジメント(株)に出向し、沿線営業部にて主に阪神沿線物件のテナント管理を担う。 2014年より阪神電気鉄道(株)開発営業室に配属され、2018年の組織編制変更につき現職。梅田一丁目一番地計画と梅田まちづくりに携わる。

姜 同徹

2007年入社
阪急阪神不動産(株) うめきた事業部うめきたグループ/課長補佐

阪急電鉄(株)入社後、同社不動産開発部に配属され、技術・建築系担当として阪急西宮ガーデンズなどの開発に従事。阪急阪神ビルマネジメント(株)出向を経て、2013年から再び阪急電鉄(株)不動産開発部へ。2018年の組織編制変更により現職となる。梅田一丁目一番地計画などの開発案件および企画案件を担う。

※掲載情報は取材当時(2017年)のものです。

Prologue

「梅田一丁目一番地計画」とは、阪神百貨店(阪神梅田本店)の入居する大阪神ビルディングおよび新阪急ビルの建替計画を指す。両ビル間の道路上空を活用した建替えと周辺公共施設整備を一体的に行うことにより、都市機能の高度化や防災機能の強化、公共的空間の創出、良好な景観の形成などを図り、国際競争力の強化に資する快適で質の高いまちづくりを進めることを目指している。

阪急阪神ホールディングスグループでは将来にわたって持続的な成長を実現するため、「梅田地区をはじめとする沿線の価値向上」を事業戦略の一つに位置付けている。2012年に全面開業した梅田阪急ビル・阪急うめだ本店、2013年にまちびらきを迎えたグランフロント大阪。そして、さらなるまちのにぎわい創出に向け、2022年の全体竣工を目指しているのが「梅田一丁目一番地計画」だ。

新開発チームの熱意が行政を動かし、
法改正につながった

「梅田一丁目一番地計画」の検討が開始されたのは2006年。
関西の経済の中心地である梅田地区のポテンシャルを最大限活用するため、2棟のビル敷地の一体的利用として道路上空利用と指定容積率の2倍となる2000%という高容積率の確保を目指したのが同プロジェクトの始まりだ。

橋本
道路上空利用と2000%の容積率、これらはいずれもプロジェクト立ち上げ時には法的に認められておらず、前例のないものでした。そのため当時の担当者は規制緩和獲得から取り組むことを強いられました。プロジェクトの意義を粘り強く説明し、この課題を解決することが、まちの活性化につながると大阪市との協議を重ね、市と連携して国への働きかけも行い、やっとの思いで敷地の一体的利用について法制度を変える糸口を見出したといいます。道路上空利用に関しては、都市の国際競争力強化の観点から道路上空に複数階の建物を建築、災害時の一時滞留スペースを兼ねるカンファレンスゾーンの他、商業利用することも可能となり、容積率については、ビルの建替えに併せた周辺公共施設の整備・維持管理などの公共貢献を開発要件に盛り込んだことが評価され、目標の2000%の獲得につながりました。

日々の地道な積み重ねが、
まちづくり成功への第一歩

Ⅰ期工事として2014年10月から各種工事が始まった「梅田一丁目一番地計画」。
橋本は同年からプロジェクトメンバーとなり、姜はその前年の2013年から参画している。それぞれのミッションに向き合う2人は今、どんな役割を担っているのだろう。

橋本
ビルの価値向上を目的とした、建物および周辺公共施設のエリアマネジメントを含む管理運営計画の検討を行い、その実現に向けて行政や地権者など様々な関係者と協議・調整を行うのが私の仕事です。このプロジェクトでは周辺公共施設の整備・維持管理などの公共貢献を確約しているため、例えば地下道の整備やバリアフリー化、地上の歩道の拡幅・美装化や広場の整備、上空では歩行者デッキの設置など、様々な案件について関係者との交渉が欠かせません。それぞれ立場が違えば要望も異なりますから、双方のメリット・デメリットを踏まえて落としどころをどこにするか。この駆け引きが苦労するところであり、面白みでもあります。
私が担っているのは理想とするビルを実現するため、設計者や施工者と協同して、行政や周辺の地権者など様々な関係者との合意形成を図り、計画を前進させることです。道路を挟んだ2棟のビルを一体に建替えるという国内で前例のない計画であることに加え、当グループとして史上最大級規模の開発であることから、難しさはひとしおでした。設計・工事のプロである設計者・施工者が悩み、計画や工事を許可する行政も判断を迷うなか、計画をマネジメントする立場の私たちが一歩下がれば開発はすぐに滞ってしまいます。そうならないよう積極的なコミュニケーションを心掛け、計画を前進させるのが私のミッションです。

日本初の道路上空利用を実現。
この感動を忘れない

2018年春の百貨店部分竣工を目指し、Ⅰ期工事はいよいよ佳境に入っている。
プロジェクトが始まってから12年、2022年の全体竣工まで残り5年。
これまで多くの人が関わってきたプロジェクトが一つの節目を迎える今の心境を聞いてみた。

橋本
前任の方々が苦労して実現した道路上空利用や2000%の容積率といった大きな成果を引き継いで、今があると感じています。こうした大規模プロジェクトは、同じ担当者が最初から最後まですべてに携われることはほとんどない。だからこそ、プロジェクトを知っている人、知見のある人にいかに頼るかが重要です。頼るためには、まず自分が状況や課題を整理したうえで、どういったメンバーを集めれば解決できるかを考え、体制を整える必要がある。社内外を問わず人間関係、コミュニケーションを重視してやってきた結果、何年も図面で見てきたものが今、現場で実際にかたちになっている。このプロジェクトの場合、やはり道路上空部分に初めて構造物(桁)が架かった時の達成感は非常に大きかったですね。
私もそれが一番感慨深かったです。着工時点では数年先といわれた道路上空部分の工事を2017年1月から始めることができ、当該部分の床設置後、初めての現場巡視で「今歩いているのが道路上空です」と言われた時、本当に実現したんだと改めて喜びをかみしめました。また、行政との交渉事で先を読み、自分が描いたストーリー通りに話が進んだ時にも手ごたえを感じていましたね。行政側はどうしても原理原則に忠実に話を展開しますが、それでは私たちが理想とするビルは実現できない。相手を納得させながら、いかに自分たちのやりたいことに近づけるかも工夫のしがいがありました。

さらなる梅田エリアの活性化、
梅田ブランドの向上を目指して

2021年秋にはⅡ期百貨店部分竣工、2022年春には全体竣工・オフィス開業が予定されている。橋本、姜は今後のプロジェクトにどんな想いを馳せ、梅田というまちをどう変えていきたいと考えているのだろうか。

橋本
今はまだ、まずⅠ期棟を無事にオープンさせることで頭がいっぱいです。ただ、私は「梅田まちづくり」も担当しているので、開発物件はもちろん、グループが所有するビルとも連携し、まちと一体的に運営することでビルの価値向上、ひいては梅田エリアの活性化・ブランド力の向上につなげたいと思っています。学生時代、西梅田開発に憧れてこの道を選んだ経緯があるので、今それに勝るとも劣らないプロジェクトに携われることは私の誇りです。商業、インバウンドはもちろん、防災や健康など様々なテーマに基づき、より魅力的な梅田をプロデュースしていきたいですね。
観光客の方等が大阪と聞いてまずイメージされるのは、心斎橋や難波といったミナミエリア。キタの梅田界隈はまだまだ認知度を高める余地があると思います。今携わる「梅田一丁目一番地計画」を通じて、梅田という街をより多くの人に知ってもらいたい。また、これは将来的な夢ですが、阪急梅田駅周辺施設の建て替え計画を実現し、大阪・梅田をさらに盛り上げたいと思っています。入社後すぐに携わった阪急西宮ガーデンズの開発経験等を活かし、大阪らしい、人の温かみが感じられるまちづくりを実現したいと考えています。