政府関係機関との共同プロジェクトも!
成長途上のASEANで自社ノウハウを活かして活躍中

#3 海外不動産事業

岡本 信秀

2009年入社
阪急阪神不動産(株) 海外事業本部 海外住宅事業部/課長補佐

阪神電気鉄道(株)不動産事業本部開発営業部を経て、同本部開発営業室計画チームに配属。「梅田一丁目一番地計画」の行政・地元協議などに携わるほか、海外不動産事業検討チームにも所属する。その後、(株)ウエルネス阪神に出向し、ディッピンドッツ(DD)アイスクリームの台湾事業立ち上げを担当。DD事業の現地代表を約3年務めた後、2018年11月より現職となる。

浜辺 里美

2019年入社
阪急阪神不動産(株) 海外事業本部 海外開発事業部

大学・大学院で建築学を専攻。建築をより深く学ぶため、在学中に留学や建築設計事務所での長期インターンシップを経験。2019年5月より現職となり、主にインドネシアの案件を担当する。

※掲載情報は取材当時(2020年)のものです。

Prologue

阪急阪神ホールディングスが掲げる経営戦略「長期ビジョン2025」に基づき、以前から注力されていた海外事業が今、加速度的に成長している。2015年のベトナム住宅分譲事業を皮切りに進出国を増やし、2016年には住宅事業だけでなく物流倉庫開発にも進出した。このような事業の発展を踏まえ、これまで経営企画本部内の一部門だった海外事業部が2019年4月より海外事業本部となった。現在は、ASEAN地域での展開もベトナムからインドネシア、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシアへと拡大している。

阪急阪神不動産(株)が目指すのは、日本での不動産事業で培ったノウハウを海外でも活用し、海外での安定的な収益基盤を構築すること。今後、海外事業を同社の収益の柱の一つとすることを目標としている。この【海外不動産プロジェクト】では住宅分譲事業に携わる岡本さんと、賃貸開発事業に携わる浜辺さんの仕事を通じ、国内とはひと味違う海外不動産ビジネスの魅力に迫りたい。

阪急阪神が長年取り組んできた“まちづくり”
日本で培ったビジネスモデルでいよいよ海外へ!

同じ海外事業でも、住宅分譲と賃貸開発とそれぞれ異なる仕事に携わる岡本さんと浜辺さん。まずはこの事業本部に配属されるまでのキャリアと、現在の仕事について聞いてみよう。

岡本
私が海外事業部(当時)の所属となったのは2018年11月で、不動産事業では以前に梅田一丁目一番地計画(阪神百貨店〈阪神梅田本店〉が入居する大阪神ビルディングおよび新阪急ビルの建て替え計画)や、阪神沿線の学生向け賃貸マンションの計画立案、行政との協議などを行ったことがありました。同じ不動産と言っても賃貸施設の開発経験しかない中でいきなり住宅分譲、しかも海外事業に携わることになり、辞令が下りた時は少々驚きました。
浜辺
まったく海外経験がない中での挑戦だったのですか?
岡本
いえ、海外には以前から縁があって。実は私、生意気にも入社1年目の人事担当役員との面談で「これからは海外も視野に入れていく必要があると思います」なんて発言をしたんですね。そんなこともあってか、入社4~5年目に海外不動産事業検討チームの一員に選ばれました。その後はグループ会社のアイスクリーム事業の海外進出を担当し、家族帯同で台湾に駐在しました。
浜辺
その経験が買われて海外事業に抜擢されたのですね。
岡本
ただし、現在私が担当しているのはタイとフィリピンなので、台湾での経験がフルに活かせているかというと、そこはね(笑)。でも、海外では日本的な“あうんの呼吸”が通用しないということは分かっているし、その一方で国籍や文化が違っても話せば理解し合えるということも体感してきたつもりで、こうした経験は今の仕事に役立っていると自負しています。
浜辺
住宅分譲事業ではどんな仕事を担当しているのですか?
岡本
成長著しいASEAN各国において、パートナーである現地デベロッパーとともに実需層向けのマンションや戸建住宅などの住宅供給を行うのが住宅分譲事業です。私はタイとフィリピンの事業の国内統括業務を担っており、現地に赴任している駐在員や現地採用の社員、そしてパートナー企業と連携しながら、新規案件の取得に必要な業務、例えば取得に向けた社内会議資料の作成や、中期経営計画に必要な数値や収支の管理、契約書のチェック、役員視察の同行などを行っています。賃貸開発事業に携わる浜辺さんはどんな仕事に携わっているのですか?
浜辺
私はインドネシア案件の担当として主に2つの業務を担っています。1つ目は当社が出資した複合施設「プラザインドネシア」で行っている物件価値向上プロジェクトにおいて、同施設を運営管理する現地パートナー企業と当社グループの連携を推進する事務局としての業務です。例えば、当社とホールディングスのグループ会社から成るプロジェクトチームによる現地視察の手配や同行、現地パートナー来日時の当社物件の視察調整や通訳・宿泊先の手配、会議の進行、その他関係者との調整や資料作成などです。2つ目は新規案件の検討業務で、インドネシアでのさらなる事業拡大を目指すため、現地駐在員や現地スタッフと連携した情報収集、個別案件の事業性検討などを担当しています。

文化、慣習、考え方の違いを乗り越え、
海外ビジネスを推進するやりがい

日本のやり方を押し付けるだけではうまくいかない。そんな壁にぶつかりながらもさまざまな体験を重ねていく2人。ここではやりがいと苦労について聞いてみよう。

岡本
浜辺さんはもともと海外事業に興味があったのですか?
浜辺
私は大学院で建築を学び、在学中に海外留学や海外長期インターンシップを経験しました。現地で働き続けることも考えましたが、海外から日本を見た時に改めて自分が生まれ育った関西の魅力を認識し、関西と海外をつなぐ仕事に携わりたいと当社を志望したんです。なかでも海外事業本部の仕事内容に興味を持ち、配属を希望しました。
岡本
実際に仕事をしてみて、どうですか?
浜辺
配属されて半年後に初めて現地出張に行かせてもらい、「プラザインドネシア」を実際に見た時は感動しました。メールなどでしかやり取りのなかった現地パートナーとも直接会って意見交換することができ、その時に改めて自分もプロジェクトメンバーなんだと実感しました。
岡本
なるほど。海外と日本の文化の違い、考え方の違いを感じる場面はない?
浜辺
それはありますね。インドネシアでの現地パートナーとの協業は「当社のノウハウを現地で活かす」のが趣旨で、日本のやり方を持ち込んでほしいというパートナーからの期待を感じる一方、議論を詰めていくと日本と現地の習慣や考え方の違いが浮き彫りになり、当社のやり方を単純に適用できるわけではないことを実感しています。
岡本
そうだよね。さっきも言ったけれど、海外では日本的な“あうんの呼吸”が通用しない。こう伝えれば、あれもこれも言及してくれると思って問い合わせても、質問したことのみにしか回答がもらえないということが多いから、事項の確認一つにもやたら時間が掛かってしまう。
浜辺
そうなんです。でもその反面、お互いに思いがけないところで新たな発見を得ることも。異文化間での協業の難しさと面白さを日々感じています。
岡本
そうそう。国籍や文化が違っても話せば分かるというのが私の持論で、まずは伝えること、共有することが大事なんだと思います。
浜辺
岡本さんはこれまでの仕事でどんなことが印象に残っていますか?
岡本
タイの物件の現場に初めて行った時のことは今もよく覚えています。ちょうど販売開始イベントを行っている最中で、人々の熱気がすごくて。国内外を問わず住宅分譲事業に携わるのは初めてだったので、自分の仕事が現地の方々の新しい暮らしや人生にかかわっているんだと感動しました。
浜辺
私も今後は新規案件にも携わり、岡本さんのような経験がしてみたいです。
岡本
ASEAN地域は伸びしろのあるエリアですからチャンスは多いと思います。一緒に海外事業を成長させていきましょう!

Epilogue

海外での住宅分譲事業の参画戸数は30,000戸を超え(2020年2月時点)、賃貸開発事業もさらなる海外ストックの取得に向けて力を注ぐ今、岡本さん、浜辺さんはどんな目標を持っているのか。最後に2人の目標について聞いてみた。

「私は海外から関西に企業や人を呼び込む仕事をしてみたいと思っています。梅田はもちろん、関西は今後広域交通ネットワークのハブとなり、国内外の多様な人や情報が集まる場所になっていくと思います。大阪以外にも京都や神戸など関西には魅力あるまちが数多くあり、そんなまちを海外の人にもぜひ知ってもらいたい。海外のスタートアップ企業の国内誘致を支援する、将来はそんな仕事にも携わってみたいと思っています」と語る岡本さん。

「私は『阪急阪神グループが来てくれて施設が良くなった』と現地の方に思ってもらえるよう、引き続き事務局業務に注力したいと思っています。国内案件と異なり、頻繁には現地に行けませんが、ウェブ会議などのツールを駆使して現地パートナーとの意思疎通を行い、うまく周囲を巻き込みながら担当案件を滞りなく進めることで、今後も協業をさらに推進するための体制を強化したいと思います。また、海外事業が持続的に成長するための基盤づくりとして、ノウハウの集約や各国の制度などの整理にも取り組み、これら一つひとつの業務を通じて今後の海外事業拡大に貢献したいと思っています」と浜辺さん。

ASEAN地域での不動産開発は日本のみならず、諸外国との国際競争力が問われる市場となっている。競合国との差別化を図るポイントには、公共交通指向型都市開発や、質が高く管理の行き届いた日本型不動産などがあるが、同社が手掛ける案件はいずれもこれらを含んでいることからさらなる需要が見込まれる。阪急阪神ホールディングスの重要戦略の一つである海外事業において、2人はきっと今後もなくてはならない存在として活躍するだろう。