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トップページ > 阪急阪神研究所 > 研究レポート > 阪神電気鉄道 鉄道事業本部 なんば線開業準備室のお仕事(2009年3月の記事)

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阪神電気鉄道 鉄道事業本部 なんば線開業準備室のお仕事


「構想は60年前から」「駅ごとに変わるデザインテーマ」「環境への配慮」といった阪神電気鉄道 鉄道事業本部なんば線開業準備室のお仕事について詳しく調査しながら、「シンボルマークの意味」「橋の建設と潮の満ち引きの関係」といった、誰かに教えたくなるウラ側も聞いちゃいました。

「阪神なんば線」って?

3月20日(金・祝)開業予定の阪神電車の新路線で、西大阪線・西九条駅から近鉄電車・大阪難波駅までを結び、近鉄電車との相互直通運転も実現させる路線です。阪神三宮⇔大阪難波⇔近鉄奈良を乗り換えなしで移動でき、さらに新路線内三駅及び西九条、大阪難波駅で既存の鉄道と接続することで、通勤、通学、レジャー、そして暮らしに大きな可能性を持った路線です。新路線開業後は現在の西大阪線を含めた尼崎・大阪難波駅間が「阪神なんば線」となります。


構想は約60年前から

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「阪神なんば線」の生い立ちは約60年前まで遡ります。戦後間もない頃に、梅田へ向かう本線の混雑緩和を目的として、千鳥橋駅まで開業していた西大阪線(当時:伝法線)を難波まで延伸し、上本町から難波へと延伸してくる近鉄電車と相互直通運転をするという、まさに現在の「阪神なんば線」と同じ路線計画が検討され、1948年には難波までの新線建設特許の申請も行いました。その後に紆余曲折があり、特許取得まで約10年を要しましたが、1964年に第1期工事として千鳥橋・西九条駅間が開業。そして、1967年からは西九条・九条駅間の工事にも着手しました。しかし、諸般の事情で、工事は一時中断となってしまいました。
工事の一時中断から約20年が経ち、地域の活性のために延伸を望む地元からの声や大阪ドーム建設予定など延伸の必要性が再び高まると同時に、1989年には国からも「2005年までに整備することが適当な路線」として位置づけられました。それらを受けて大阪市などとの協議を重ね、ついに2001年に鉄道施設を建設・保有する第3セクター「西大阪高速鉄道」が阪神電気鉄道と大阪府及び大阪市などの資本参加により設立されました。それに伴い「なんば線開業準備室(当時:西大阪線延伸推進室)」も誕生し、2003年に工事に着手できました。


40年ぶりに使われるもの
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1966年に西九条・九条駅間の工事に着手した際、九条駅近くのNTT(当時:日本電信電話公社)西ビルの建て替え工事と重なり、ビル工事と同時に一角に出入口の整備もなされていました。しかし延伸工事は一時中断となり、使われぬままの日々が過ぎていたのです。何もかもが新しい「阪神なんば線」の中で、約40年前から開業を待ち望んでいたこの出入口をぜひ見に来て下さい。


シンボルマークが表すのは

「阪神なんば線」の開業をPRするために作成したロゴマークには3つのハートがあり、それぞれに意味があります。
青が神戸の港町、赤が大阪の賑わい、緑が奈良の山並みを表し、その3つのハートを結ぶ白い線が「阪神なんば線」をイメージしています。
また全体のフォルムは、大阪湾を囲む兵庫・大阪・奈良の地理的関係も表しているんですよ。


お間違えなく
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「阪神なんば線」の開業で、阪神三宮・近鉄奈良駅間を阪神・近鉄双方の電車が行き来しますが、阪神と近鉄とでは車両の長さも扉の数も違います。そのため、各駅の乗車位置表示も阪神の車両用と近鉄の車両用の2種類設置することになりました。 ご乗車の際は、駅の案内表示で乗車位置をお確かめの上、お並びください。


「阪神なんば線」の持ち主は?

一般的には、線路や駅などの鉄道施設を建設・保有する事業者と列車を運行する事業者は同一ですが、「阪神なんば線」の新線区間では「上下分離方式」という方式をとっています。これは鉄道施設の建設・保有=「下」と列車の運行=「上」を分離する方法で、「阪神なんば線」では、大阪府・大阪市・阪神電気鉄道などが出資している西大阪高速鉄道が鉄道施設を建設・保有し、阪神電気鉄道がその鉄道施設を借り受けて列車の運行を行っています。この方式はまちづくりなどについて行政と連携が取れるだけでなく、経済面での鉄道会社の負担が少いため、都市部での新線建設が現実的となり、また開業後は新線区間での運賃も低く抑えられるといったメリットがあります。


ゲームの問題にもなりました
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阪神と近鉄の乗務員はどこの駅で交代するかご存知ですか? 両社の境界駅である大阪難波駅でとお考えの方が多いのですが、実は桜川駅で行います。そこで阪神の路線である桜川・大阪難波駅間の運転は近鉄に委託する形を取っています。ちなみにこの乗務員交代の駅については、なんとニンテンドーDS用ゲームソフトの「鉄道ゼミナール 大手私鉄編」で問題にもなっているんですよ。


駅ごとに変わるデザインテーマ

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新設した各駅は、地下にあるため線路やホームが地上から見えることもなく場所がわかりづらいので、入り口はインパクトのあるデザインで、夜も光って目立つようガラス張りにしています。また、それぞれ地域性に合わせたデザインを随所に採用しています。
まず九条駅は、大阪市電発祥の地であるとともに、周辺には金属加工の工場が多く立ち並ぶエリアです。そこで「鉄」「輪」をテーマとし、駅出入口やホーム設備のデザインに鉄製の部材、輪のデザインを施しています。特にホーム上のベンチは、ふたつの輪を上下に組み合わたもので、下の輪が座る部分、上の輪が間接照明というこだわりのデザインになっています。また、「鉄」「輪」の他、近くを流れる安治川の水を表現した天井を照らす青いイメージ照明も設置しています。
次にドーム前駅は、周辺が大阪ガス発祥の地なので、1905年創業当時のレンガ造りのガス工場をイメージし、コンコースとホームの壁は約16万個のイギリス製レンガを職人が1個1個積み上げて作りました。さらに地下5階がホーム階という深い立地から、地下4階・5階といった深い階はレトロな雰囲気に、改札階など上の階は白を多用してモダンに仕上げ、時間の経過を表現しています。さらに、阪神タイガースも年間10試合程の主催試合を行う京セラドーム大阪に一番近い駅ということで、改札階には阪神甲子園球場のチケット売場を模したレンガとアーチのオブジェも作りました。
そして桜川駅は、若者が集まるおしゃれな街として活気あふれる「堀江地区」などに近いエリアです。そこでホームの壁を、難波方面行きのホームは「金属製の縦縞」、西九条方面行きのホームは「タイルの横縞」という斬新なデザインにしています。1つの駅で壁のデザインを変えるというのは、全国でも珍しいですね。また、北側を流れる道頓堀川周辺は材木問屋が多い地域なので、ホームには木製のベンチを設置しています。ぜひ電車の待ち時間等にそれぞれの駅のデザインを見てくださいね。


もちろんバリアフリーも
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各駅でデザインコンセプトを設定する一方で、公共交通機関としてバリアフリーにも十分配慮しています。新設するすべての駅で地上からホーム階までエレベーターでの通路を完備するなど一般的なバリアフリー施策にとどまらず、階段には上る時・下りる時ともに取っ手が持ちやすい波形の手すりを採用したり、多機能トイレは、お身体の状態によって使いやすい向きをお選びいただけるよう、トイレ内各設備を左右対称にしてふたつ設置するなど、すべてのお客様に快適にご利用いただける駅を目指して設計しています。


環境への配慮も重要です

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地上を走る西九条・九条駅間では、住宅のすぐ近くに線路を敷設している箇所もあり、防音効果を高めるために、通常の高架線では高さ1.5〜2m程度の板「高欄」の設置にとどまるところを、さらに電車の高さを超えてすっぽりと周囲を取り囲む「セミシェルター型防音壁」を設置し、周囲の住環境に配慮しています。それだけでなく、レールの継ぎ目を溶接して継ぎ目をなくしたロングレールの導入や、コンクリート製の道床に砂利をまいて音の反射を減らすといった、騒音・振動を低減する様々な施策を実施しています。
駅施設では、冷房設備に環境負荷の低い方式を採用しています。ドーム前駅では効率的な地域冷暖房システムを利用し、他の駅でも夜間の余剰電力を使って氷を作っておき、その氷を昼間の冷房に使う氷蓄熱方式を採用して、地球環境にも配慮しています。


九条駅出入口にあるのは…
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ガラス張りが綺麗な九条駅出入口は3階建てに見えますが、1階部分以外はお客様にお入りいただけるスペースではなく、意外なことに使われています。それは、駅の冷房設備として採用した氷蓄熱方式の氷を蓄えるタンクの置き場所になっているんです。氷蓄熱方式の冷房は、このようにタンクを必要としますが、環境負荷の低い点に着目して採用しました。


橋の建設と潮の満ち引きの関係

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西九条・九条駅間にある安治川に架かる橋梁は、運河という特性、立地上の制約などから現地で橋桁を組み立て、「ポン・ツーン工法」という珍しい工法で橋桁を架設しました。
安治川は周辺に倉庫が建ち並び、重要な海運路として船の往来も多く、また大きな船も通ります。そのため、橋の中間に橋脚(柱)を建てない、全長89mのワンスパン橋として計画しました。こういった巨大な橋を作る際は、橋桁を海辺の工場などで製作し、海・川の水運を活用し現地に運び込むのが一般的です。しかし「阪神なんば線」では、下流に水門や低い橋があるために完成した大きな橋桁を運ぶ込むことが出来ず、現場近くの安治川に浮かべた台船(浮桟橋)の上で橋桁を組み立てることになりました。
橋桁が組み上がるといよいよ川の両岸に建設した橋脚に設置するのですが、その際に利用したのはクレーンではなく潮の満ち引きという自然の力です。地上から見ると、台船の上に組み上がった橋桁は潮位の変化とともに上下します。この上下する力を利用するのです。これは、最上位となる満潮時に橋桁の位置が橋脚の高さよりも高くなるように嵩上げして橋脚を組み立てておき、満潮時に橋脚部へ橋桁を移動。潮が引くにつれて下がってくる橋桁を橋脚に載せる工法です。安治川の場合、海に近く干満の差が大きかったという立地だからこそ使えた工法で、鉄道用橋梁の架設方法としてはかなり珍しいものでした。
設置した日は、運河での航行の邪魔にならないように川の流れる方向で組み立てていた橋桁を回転させる行程も行ったため、早朝にもかかわらずマスコミやお客様など、多くの方に見守られながらの架設になりました。


阪神電車で一番の急勾配誕生
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西九条駅を出発して安治川の橋梁を渡ると線路は一気に地下へと下りていきます。その坂は、「阪神なんば線」が開業すると阪神電車で一番の急勾配となり、鉄道の勾配表記では「40パーミル」(1000m進んで40m下りる坂)です。
この急勾配が生まれた背景には、安治川橋梁において安治川の船の運行に支障が出ないよう、一定の高さを確保しなければならないという理由がありました。


地下鉄建設はモグラと同じ

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「阪神なんば線」はそのほとんどが地下区間です。駅を作る際はホームや改札階など、線路以外の構造物を作る必要があるため、地上から土を掘り起こして建設を進める「開削工法」で工事を行っています。一方、駅と駅の間を結ぶトンネルは車両が通れる大きささえ確保できればよく、「シールドマシン」と呼ばれる地中をモグラのように掘り進む機械が大活躍しました。直径約7m、そして、ジェット機ぐらいの重さがある巨大なシールドマシンは、前部に取り付けられた無数の刃を回転させて土を削りながら前へ進み、できた空間の外周にセグメントと呼ばれる鉄筋コンクリート製や鋳鉄製のブロックをリング状に組んで壁部分を完成させるという仕組みで、1分で3cm、24時間で約15m掘り進む能力を有していました。「シールドマシン」を用いる「シールド工法」は振動が少なく、地上での作業も少ないため、生活環境に優しい工法とも言えます。


お宝が障害に!?
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「阪神なんば線」の建設は、通常なら6〜7年はかかるところを、5年というかなり短い工期で行いました。そのため、私たちは河川や道路の管理者、警察や他の鉄軌道事業者、ガスや水道などの埋設企業体等との協議など、円滑な事業進捗にいつも追われていました。 地下線の工事でスケジュールに影響するのは予期せぬ地中埋設物です。不発弾など危険なものが無いか、地中の探査をしてから工事に掛かるのですが、小さなものや材質によってはその探査で事前に発見できない場合もあります。「阪神なんば線」の工事中でも、ドーム前駅を建設していた時に、江戸時代に土佐藩が木津川沿いにつくっていた船着場の石積みが出土し、研究調査等で2ヶ月工事が延びてしまいました。遺跡ファンの方にはお宝でも、私たちにとっては悩みの種でしたね。


選抜高校野球の応援は阪神なんば線で

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新設される3駅はすべて地下鉄などと連絡しているので、大阪各所から奈良・三宮への移動の利便性も向上します。これまで大阪南部や奈良から阪神甲子園球場に行くには、梅田を経由して行かなければなりませんでしたが、甲子園へのアクセスもぐっと近くなります。リニューアルオープンしたばかりの甲子園で行われる春の選抜高校野球の開幕は、「阪神なんば線」開業の翌日3月21日です。甲子園駅にも停車する快速急行を平日に100本、土休日に82本も運行しますので、高校野球観戦は、ぜひ「阪神なんば線」でお越しください。もちろん、阪神甲子園球場での阪神タイガースの試合や京セラドーム大阪のオリックス・バファローズの試合の観戦にも、「阪神なんば線」がお連れします。


あの人が作曲!
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「阪神なんば線」開業を機に、阪神電車全駅でホームの看板を青地に白文字の見やすいものに統一しました。また、各駅の案内アナウンスは「奈良ゆき」といった言葉を追加する必要があったので、言葉の追加にとどまらず各音声・メロディも一新しました。作曲を担当したのはフュージョンバンドとして有名だった「カシオペア」のキーボーディストで、鉄道が趣味という向谷実さんです。


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