世の中もうきうきとした雰囲気につつまれる5月のゴールデンウィーク。その最中に梅田・茶屋町のホテル阪急インターナショナルで開催された「こどものためのオーケストラコンサート」。
冒頭で指揮者の岩村さんが「皆さんの中には、曲に合わせて自然に体が動いてしまう人もいるかもしれません。それでいいのです。コンサートだからといって、遠慮しなくていいんですよ」と言われた瞬間、会場の空気がふっと緩やかになるのを感じました。このコンサートの特徴を一言で表した瞬間だと、今でも頭の中に残っています。
オーケストラコンサートということで、こども達の中にはドレスや蝶ネクタイでおめかししている子もちらほら。演奏が始まっても最初はちょっぴり緊張している様子が見られました。しかしその緊張もつかの間。顔が見えるほど近くで演奏された今回のコンサートでは、そのダイナミックな音とリズムに、こども達もじっとしていられなかったようで、みんな次第に体を揺らしたり、楽器のデモンストレーションで知っている曲が奏でられると、一緒に歌うようになってきました。
普段であれば、席にじっとしていなくてはならないと教えられたり、コンサート会場に入れないことも多いこども達。私達大人もオーケストラコンサートは音をたてず、静かに聴かなくてはならないと思っている人がほとんどのはず。しかし曲に合わせて体を動かし、時に手拍子や歌を合わせて伸びやかにオーケストラを楽しむひと時は、こどもだけでなく大人の私にとっても新鮮で、楽しい経験でした。
今回のコンサートはこどもを対象としたものとあって、構成も他のコンサートとはちょっと違いました。特に実際に会場のこどもがタクトを振い、「天国と地獄序曲より『カンカン』」を指揮する体験はとても貴重な思い出になったのではないでしょうか。大勢の観衆の前に出て最初は恥ずかしそうにしていた子も、タクトを振るタイミングによって、楽曲のスピードやイメージが自在に変わることを知ると、嬉しそうに小さな手を早く振ったり遅く振ったり。終わったあとにはタクトのプレゼント。少し驚きながらも嬉しそうにタクトを胸に抱いていたあの子が、いつかオーケストラを指揮することになるかもしれませんね。
コンサートが終わった後も、こども達の興奮は冷めやらず。ぴょんぴょんととび跳ねながら帰るこども達に今日の感想を聞くと、「トトロが楽しかった」「聴いたことがある曲があった」「また聴きたい!!」とみんな満面の笑顔で答えてくれました。
こども達の姿を見ていると、「音を楽しむ、音楽」ということがどういうことか、少しわかったような気がします。たくさんの音の響き、演奏によって表情を変える曲の数々。今日耳を澄ませたこども達の心には、CDやテレビでは決して味わえない「本物の音」が確かに響いていたことでしょう。 |