仙台空港から車で2時間。南三陸町の被害はテレビなどで知っているつもりでしたが、実際に現地に行ってみると、目の前に広がる光景に思わず言葉を失います。線路はねじれ、うず高く視界をさえぎるほど積まれたがれきの山。骨組みだけ残った建物や、廃棄された車…ただただそこにあった生活の名残を留める家の基礎だけが四角く残っています。
パーティーの始まる少し前、会場である『南三陸ホテル観洋』の女将、阿部憲子さんにお話しを伺うことができました。
「街を見てお分かりいただけるように、南三陸町の復興はスピード感があるというわけではありません。やっと命が守られた人達にとって、買い物をする場所もない、交通の便も整っていないというこの状況は非常に不安なものです。現在、南三陸町でもっとも懸念されているのは人口の流出。街から人が徐々に出ていき、戻ってこなくなってしまう状況ができつつあります。こうしたことを防ぐために重要なのは、雇用や教育、そして人々の触れ合うコミュニティを創ることにあります。今回の阪急阪神交通社グループさんのイベントもそうですが、人々が顔を合わせて楽しめる機会があるというのは非常に重要です。特に未来を担うこども達の笑顔は、保護者や地域のお年寄りの心も明るく照らしてくれますから。」
確かに深い爪痕を残している被災地にあっても、こども達は笑顔を忘れません。パーティーの最中、笑顔を見せるこども達を眺める保護者の皆さんの顔も、とても優しく穏やかです。一人のお母さんからは「仮設住宅はくじで決まるので、中には仲の良い近所の友達と離れてしまうこどももいるんです。学校では会えますが、放課後一緒に遊ぶということは難しいので、今日こうして友達同士で思いっきり遊べる機会ができたのは、本当にこども達にとっても、私達保護者にとっても嬉しいことなんですよ」という、被災地の外からはなかなかわからないお話しを伺うことができました。
こうして、ささやかではあるもののひと時、被災地のこども達や保護者の皆さんがくつろぎ、コミュニケーションを取るお手伝いができたことに、阪急阪神交通社グループの皆さんも大きな達成感を感じていたようでした。
また女将は私達がこれから震災復興のためにできることについて、こんなお話しをしてくださいました。
「今は一人でも多くの方に、被災地の現状を知っていただくことが大事です。例え物見遊山でも、来ていただいてお土産を買う、車のガソリンを入れる。たったそれだけで、被災地は潤います。無理をしてがれきを取り除かなくても、皆さんの得意とすることで、被災地を支援していただけると嬉しく思います。」
パーティーが終わり、にこやかに大きく手を振って帰るこども達。一日も早く被災地の方々が当たり前のように笑える日が来るようにと祈りながら、私達一人ひとりにできることは何だろうか、と考えるきっかけを与えられたような取材となりました。
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