ゆめ・まち隊の突撃レポート

vol.48 能勢電鉄 「従業員による森林保全ボランティア活動」
第48回は、日本一の里山と呼ばれる川西市黒川地区にある妙見山の里山保全を目的に、能勢電鉄の従業員がボランティアで行う森林保全活動についてご紹介します。
(本記事の内容は、2015年5月時点のものです)

林業遺産に選ばれた「日本一の里山」を守る
「日本一の里山」と称される川西市黒川地区は、妙見山のふもとに広がる、昔ながらの景観と豊かな自然環境が残るところです。能勢電鉄では2011年から、妙見山の自然環境や里山林の保全を目的に森林保全活動を実施。毎年1~3月に全従業員を対象にボランティアスタッフを募集し、下草刈りや間伐作業を行っています。
黒川地区は、室町時代から茶道で使用される高級炭の生産地。その断面が菊の花に見えることから「菊炭」と呼ばれています。千利休も愛用したといわれる「菊炭」の原材料はクヌギ。鹿の食害を防ぐために、地上1~2mの高さで台場状に切り落としたクヌギの幹に、新たに生育する枝を炭に加工しています。黒川地区は、「菊炭」生産のために8~10年周期で順に伐採された、生育段階の異なるクヌギ林によるパッチワーク状の里山景観が見られます。また、明るい林間には多様な生物が生育するなど、生物多様性も維持されており、その歴史性と環境価値が評価され、2014年3月に一般社団法人日本森林学会が認定する「林業遺産」に選ばれました。また、同じ地区には、川西市の天然記念物の指定を受けるエドヒガンという桜の群落も残されているなど、文字通り「日本一の里山」の環境を誇っています。

間伐や下草刈りでクヌギ林を蘇らせる
森林保全活動は、能勢電鉄の所有地でもある林業遺産の台場クヌギ林で行われます。準備運動を終えたスタッフは、ヘルメットをかぶるなど身支度を整え、数名ごとのグループに分かれて作業を開始。急斜面での作業なので、足元がすべらないように注意しながら、日光をさえぎる常緑樹や雑木をのこぎりで切り倒していきます。すると、みるみるうちにクヌギ林が明るくなり、台場クヌギに陽射しが届きます。能勢電鉄の林さんは、「里山林は放置されると陽射しが入らなくなり、草花が生えなくなり、台場クヌギもいつか消滅します。このように人が世話をすることで里山は蘇るのです」と話します。作業は大変そうですが、「コツがわかれば、すぐにできるようになりますよ。でも、斜面での上下作業には注意が必要です。木を切る前に声をかけ合ったり、大きな丸太は協力して運びます」。
切った木は、枝を落として1m前後に短くカット。そうすることで早く枯れて腐葉土になるうえ、斜面に小山にして置くと景観も良く、土砂崩れ防止にもなります。
六甲山観光 米田さん

目に見える成果がやりがいと達成感に
地元の里山保全団体「川西里山クラブ」でも活動する林さんは、その経験を社内の森林保全活動に活かしています。保全を続けるだけでなく、いずれは間伐した木を利用して、しいたけ栽培もしたいとのこと。「自然のなかでの作業は四季を体感でき、倒木はストレス発散にもなります。すっきりしていく山を見るとやる気が出て、心地よい疲労と達成感を味わえます」。また、同じ目的を持った従業員が集まるので、部署を超えた連帯感が生まれるのもメリットだそうです。「生物多様性の豊かな森づくりを目指して今後も活動を続けていきます。こども達にも林業体験をしてもらうなど、心癒される里山の本来の姿を多くの方に見ていただきたい」と、夢は広がります。
親子が一つとなって楽しむトーナメント
親子が一つとなって楽しむトーナメント


行ってきました!社会貢献担当の当日レポート 能勢電鉄「従業員による森林保全ボランティア活動

取材に伺った1月の実施日はケーブル運休のため、「黒川」駅から現地まで山道のハイキングコースを歩きました。ふだん山歩きなどしない私には少々きつい道のりでしたが、朝のすがすがしい空気を感じながら落ち葉を踏んで進んでいくと、鹿のふんや、鹿が角を研いだ木、そして最後には野生の鹿にも遭遇。街中では決してできない野生味あふれる体験ができました。

社会貢献担当の当日レポート

現地に到着する頃には身体が温まり、スタッフの皆さんはグループにわかれて早速作業を開始。雑木が間伐されると一面がパッと明るくなり、台場クヌギに陽射しが当たります。このような地道な作業が行われないと、地面に太陽の光が届かないため他の草木が育たず、それらを食べて生きる生物にも影響します。こうして里山はどんどん荒廃していくのだということを目の当たりにしました。

社会貢献担当の当日レポート

初参加の従業員に質問すると、「経験のない作業にも除々に慣れてきました。もくもくと作業するのが楽しいので、また参加したいです」とのこと。豊かな自然のなかで身体を動かし、さらに「日本一の里山を未来に残すやりがい」につながることが、この活動の醍醐味だと感じました。これからも森林保全活動が継続され、人と自然が共生する素晴らしい里山が守られていくことを心から願う取材となりました。



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