The Engineers Roundtable

様々な経験を重ねたからこそ描ける未来がある。
100年かけて培った技術を、今後は海外へ

技術系座談会

篠原 敬英

2008年入社/電気系専攻
阪神電気鉄道(株)
都市交通事業本部 電気部 通信課/課長補佐

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1~4年目
阪神電気鉄道入社
電気部通信課にて信号・通信設備の設計、施工管理を担当。阪神なんば線における通信設備の新設や梅田駅などの案内表示器の更新、信号システムの更新・改良などに携わる。
5、6年目
国土交通省出向
国土交通省関東運輸局鉄道部技術第二課にて鉄道電気施設に関する行政業務(許認可、保安監査、完成検査)に携わる。
7年目~現在
阪神電気鉄道 都市交通事業本部 電気部
通信課にてお客様への異常時等案内システムや鉄道用ネットワーク設備、次世代駅務オンラインシステムの構築など通信・駅務設備の設計および中長期投資計画の策定に携わる。

※所属部署・役職は取材当時(2018年)の名称です。

堀江 康生

2003年入社/機械系専攻
阪急電鉄(株)
都市交通事業本部 都市交通計画部/課長

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1~4年目
阪急電鉄入社
車掌・運転士業務に従事した後、技術部に異動。工場・車庫での鉄道車両の検査・保守業務を経て、パターン制御ATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)や阪急9000系新造車の導入に関する設計・調査業務を担う。
5~7年目
阪神電気鉄道 都市交通事業本部 車両部
車両課にて阪神1000系新造車の導入・阪神9000系車両の近鉄乗入改造を含む、阪神なんば線開業に向けた設計・調査業務を担当する。
8~14年目
阪急電鉄 都市交通事業本部 技術部
「京とれいん」などの改造設計・工事管理に携わった後、正雀工場の統括管理業務に携わる。
15年目~現在
阪急電鉄 都市交通計画部
阪急電鉄が長年培ってきた鉄道事業運営ノウハウの海外展開に向けた検討業務に携わる。

※所属部署・役職は取材当時(2018年)の名称です。

仲谷 篤

2006年入社/システム系専攻
阪急阪神ホールディングス(株)
人事総務室 人事部
兼 阪神電気鉄道(株) 人事部/課長補佐

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1~3年目
阪神電気鉄道入社
車両部車両課にて阪神1000系新造車の導入・阪神9000系車両の近鉄乗入改造を含む、阪神なんば線開業に向けた設計・調査業務を担当する。
4~8年目
阪神電気鉄道 都市交通事業本部 車両部
検車課にて車両の定期検査管理や不具合対策の検討を経験した後、車両課にて中長期的な予算管理にも携わる。
9年目~現在
阪神電気鉄道 人事部
採用・育成・社員対応・制度運営などに携わる。2018年からは、阪急阪神ホールディングスの人事部の業務にも携わる。

※所属部署・役職は取材当時(2018年)の名称です。

※所属部署・役職は取材当時(2018年)の名称です。

部署や組織の枠を超え、
一丸となって進めた阪神なんば線プロジェクト

堀江
私はこれまで車両の改造設計や工事の管理、メンテナンス工場の統括業務などに携わってきました。仲谷さんは車両の電気機器やシステムの設計、篠原さんは通信設備や駅務機器の設計が専門。技術系と一括りに言っても全員経歴が異なりますが、皆さん、これまでのキャリアで印象に残っているのはどんな仕事でしょうか?
篠原
私は1年目に携わった阪神なんば線の開業に向けての仕事です。阪神なんば線プロジェクトとは、阪神西九条駅から近鉄難波駅(現大阪難波駅)まで路線を延伸し、神戸三宮駅と近鉄奈良駅間を最長区間として近畿日本鉄道との相互直通運転を実現した一大プロジェクトで2009年3月20日に開業しました。
そのプロジェクトの中で西九条駅~桜川駅における通信設備の設計・施工管理を担当し、安全かつ効率的な鉄道事業運営にあたって必要不可欠な通信インフラであるネットワーク設備、無線設備、電話設備、ITV(駅等のカメラ)システムや、お客様向け案内設備である案内表示器、放送設備など様々な設備を手掛けました。
仲谷
私も阪神なんば線開業に向けての業務は印象深い仕事の一つ。新たな路線へ乗り入れるための新造車1000系の導入対応や既存車両9000系の改造対応、これら車両の竣工までの検査や新線および近鉄奈良線での試運転にも携わりました。堀江さんとは当時同じ部署で仕事をしていました。
堀江
懐かしいですね。私もそのプロジェクトで、車両の改造設計や新造車の導入、近鉄線内での走行安全性確認のための試験の計画や試運転の実施などを担いました。あの時は社内外との調整や連携がなくてはプロジェクトの前進はなかったですよね。
仲谷
そうですね。運輸部をはじめとして、社内の他部署との調整はもちろん、車両メーカーや装置メーカー、近鉄さんの車両部門との打ち合わせもたくさん行いました。両社の乗務員が安全に運行できる電車にするため、実は運転台のベルは2種類設置していたり、お客様の乗車間違いを防ぐため、快速急行の列車種別色を近鉄線と阪神線で赤から水色に変えていたり・・・細かなところの調整もたくさんありました。
篠原
それで言うと、乗車位置のマークもその一つです。近鉄さんとの相互直通運転にあたって、両社では車両長や扉位置が違うため乗車位置が異なるという課題がありました。そのため、お客様が混乱されないように案内する必要があったのですが、当社では初めての取り組みであったため、関係者とともに案内表示器での見せ方や案内放送のタイミングについて繰り返し議論したのを覚えています。ちなみに、両社とも自社車両の乗車位置マークは△ではなく○にしたいようで、阪神車両は阪神線では○で、近鉄線では△で案内されています(笑)
仲谷
さきほど述べた運転台のベルの音など、乗務員にとっては聴き慣れた音の方が良いですし、安全・安心・快適な電車運行のためには妥協できないところですからね。細かな違いも突き詰めて、落としどころを見つけることに苦労しましたが、その分やりがいも感じました。
堀江
開業日が決まっている中でスケジュール調整しながら、すべての業務を完了させる。高い壁だったからこそ乗り越えた後の達成感は大きかったですよね。
仲谷
私は開業当日にチームメンバーと始発電車に乗りに行ったのですが、阪神電車が初めて近鉄線区に乗り入れた瞬間、車内から「おおっ!」という歓声が聞こえてきて。自分たちが携わった新たな交通ネットワークが多くの人々の関心を集め、利便性向上に寄与しているんだと強く実感することができました。

三者三様のキャリアパス。
様々な経験により多角的な視点が養えた

篠原
私は1年目で阪神なんば線プロジェクトに携わるチャンスをもらい、「仕事は一人ではできない」ということを学ぶことができました。これは私にとっての転機だったのですが、お2人にもそんな転機がありましたか?
仲谷
私は技術部門である車両部からスタッフ部門の人事部への異動が転機になりました。技術部門とスタッフ部門では仕事内容も異なりますし、接する人も変わります。車両部時代は技術者同士で通じることも多々ありましたが、今は学生さんも含め、接する人が幅広く、相手にわかるように言葉を選び、伝え方も工夫しなくてはなりません。マネジメントに携わる総合職として、こうした経験ができることは非常に有難く感じています。
堀江
私の転機は阪神電気鉄道車両部への異動ですね。阪急と阪神の経営統合後、自身にとって初めての大きな異動で、同じ車両部門でも業務の流れや組織の雰囲気が異なり、慣れるのに少々苦労しました。でも、そこは同じ鉄道マン。一緒に働くうちに魂は同じだと互いに気付き認め合える関係になれました。「オン」も「オフ」も人間臭く付き合う、これが信頼関係構築の肝だと学びました。
また当時、阪急・阪神間の技術面の交流にも力を入れました。阪神で使用実績のあるメンテナンス性に優れたドアエンジンを阪急に導入するための架け橋役も担いました。
※ドアエンジン:客室の乗降用扉を開閉するための装置
仲谷
最近では、阪神の新造車5700系に、阪急1000系で新機軸として採用したPMSMを導入するなど、メーカーの技術動向を注視しながらグループで連携し、より新しく、より良い技術を検証し、導入の意思決定を行うということもありました。こういった技術的なチャレンジも仕事の面白さですね。
異なる組織を知るという意味では篠原さんも国土交通省出向という経験がありますよね?
※PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor(永久磁石同期電動機)。電車の駆動用モーターとして採用
篠原
はい、5年目から2年間出向していました。それまでは自社設備にしか目が行き届いていませんでしたが、幅広く他社の技術や設備に対する設計思想などを知ることができ、大いに視野が広がったと思っています。今の業務においても前例に囚われない考え方が求められる時がありますが、少しは柔軟な考え方ができるようになったのではないかと思います。

多彩な事業、幅広い人との出会いが成長への原動力。
そして、次なる夢へ。

篠原
「鉄道=成熟産業」だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、安全性向上やサービスの充実、増加する高齢者やインバウンドへの対応など取り組むべきテーマは多く、社会的にも注目されている事業だと感じています。私たち技術者のやりがいはこうしたテーマを踏まえつつ、お客様目線に立って新技術を採用したり、既存技術を組み合わせたりするなど、要素技術を使える技術に変えて社会に展開できることだと考えています。また、当社は様々な事業に携わるチャンスがあるので技術者が幅広く活躍できると思います。
堀江
技術面に関しては、鉄道施設や車両の製造・工事はメーカーが担当しますが、より根幹となる安全性等に関する考え方・設計思想は当社にあります。社内に蓄積された設計思想をベースに基本仕様を決定したり設計業務に関与したりできる点も鉄道会社ならではのやりがいですね。また、幅広い活躍の場があるというのも同感。早くから責任ある仕事を任せてもらえますし、人とのふれあいを大切にする風土があるという点も当社の大きな魅力だと思います。
仲谷
私たちの仕事はお客様の反応を自ら体感できる魅力もありますよね。多彩な事業を通じて「安心・快適」や「夢・感動」をお届けし、それがお客様にどのように届いているかを自ら確かめることができる。それが、何よりのやりがいだと思います。ところで、お2人は今後実現したい夢はありますか?
堀江
今私は、当社が培ってきた鉄道運営ノウハウを海外展開できないかということを検討しています。日本の鉄道会社は世界的に見てトップクラスの輸送サービスを実現していますが、中でも当社は、鉄道と沿線開発を車の両輪としてお客様にライフスタイルを提案してきた強みがあります。その強みを活かして、新興国をはじめとした国や地域の交通インフラの利便性向上や、経済発展に貢献できればと思っています。
篠原
なるほど。私も今、培ってきたサービスやシステムを沿線外の他社にも展開するようなことができれば嬉しいと考えています。自社で培ってきた技術やノウハウを国内、海外へと広げられたら面白いですよね。
仲谷
私たちには日本国内で多彩な事業を手掛けているという強みがありますから、これらを通じてインバウンドの方々に「阪急阪神」を積極的にアピールし、鉄道の高度な技術力を知ってもらうという手もある。技術部門とスタッフ部門両方を知る私としては、技術部門と他の事業をつなぐ架け橋として広く貢献できればと考えています。

技術をもって何を成し遂げたいか、
どう社会に貢献したいのか

仲谷
現在私は人事部に所属していることもあり、学生の皆さんと接する機会が多いのですが、何か学生の皆さんに伝えたいことはありますか?
篠原
学生生活では皆さんそれぞれ力を入れて取り組んでいることがあると思いますが、それぞれの分野で “改善プロセス”を意識することが大事かと思います。というのも、仕事は現状分析を行い、そこから問題点を抽出し、解決策を検討し実行、そしてその結果を評価するという“改善プロセス”の連続です。例え想定していた結果がでなくても、自分で考えた工夫点や苦労した点が非常に大切だと思っています。ですので、学生生活でも是非“改善プロセス”を意識していただきたいなと思いますね。
堀江
私は、「仕事を通じて何を実現したいか」をしっかりと考えていただきたいなと思います。特に技術系の方には、「技術をもって何を成し遂げたいか」「どう社会に貢献したいか」という点もぜひ考えてみてほしいと思いますね。
仲谷
そうですね。先ほど篠原さんの話にもありましたが、当社の場合は、技術系出身社員も様々な事業フィールドで活躍していますからね。例えば、電気系出身と一口に言っても、鉄道を扱う都市交通事業、商業施設等を扱う不動産事業、情報通信ビジネスに強みを持ったアイテック阪急阪神をはじめとしたグループ会社など・・・こう考えると、本当に幅広い分野での活躍フィールドがありますね!
堀江
多様なフィールドで様々な経験とキャリアを積み、さらにチームワークを大切にしながら組織の力を活かして新領域に挑戦する、そんなマインドを持った方と是非一緒に仕事がしたいですね。