甲子園のビールカップが転生して、選手と地球を守っている?!

阪神甲子園球場での野球観戦に欠かせないものといえば、メガホン、タオル、ユニフォーム。そして、歓声で渇いたのどを潤してくれるビール!プロ野球のシーズン中には、1試合で約4万杯のビールが飲まれているというから驚きです。では、ここで質問です。「空になったビールカップは、その後どうなると思いますか?」。甲子園のビールカップに隠された意外な"転生ストーリー"を、一緒に追ってみましょう。 


畑田 芳隆

《PROFILE》

重森 弘毅(しげもり ひろき)
阪神甲子球場
企画担当 球代理

 (所属や肩書は2026年3月時点のものです。)

1試合4万杯のビールカップは、どこへ行く? 

球場で販売されるビールのプラスチックカップは、1個が約14g。これが1試合で250から300kg程度回収されています」。こう話すのは、阪神甲子園球場で球場長代理を務める重森さん。「単純計算でいうと約2万杯分のカップが回収されたことになります。2025年の年間回収率は48.7%。2020年の実績が20%ほどでしたから、回収率は5年間で約2.5倍に伸びました」。
実はこの飛躍的な伸びには理由があると言います。「きっかけは、阪神甲子園球場が2021年に宣言した『KOSHIEN"eco"Challenge』という環境保全プロジェクトです。"環境にやさしい球場"を目指して様々な取り組みをスタートさせる中、ビールカップのリサイクルにも力を入れることとなったのです」。 

そもそもリサイクルの取り組み自体は、2012年から始まっていたこと。球場のオフィシャルエコアドバイザーである帝人フロンティア株式会社と共同で、使用済みビールカップを分別回収し、イベントで配布されるノベルティグッズなどにリサイクルしてきたそうです。「とはいえ、やはりeco活動というのは来場される方々のご協力があってこそ実を結ぶもの。『KOSHIEN"eco"Challenge』を宣言することで、取り組みへの認知度が上がったことが回収率の向上につながりました」と重森さんは言います。 

観客にどうアピール?回収率UPに挑む舞台裏に密着

PC


box

現在、球場内のいたるところに"ビールカップ回収BOX"が設置されています。通路をぐるりと歩いてみると、観客の方々が帰り際に必ず通る階段の両脇にも置かれていました。甲子園球場の回収BOXの設置台数は2025年度で26台。2026年度で新たに4台購入する予定とのこと。それでも重森さんは、まだまだ数が足りていないと話します。「現場を観戦者の身になって歩いてみると、特に試合終了後は混みあう中で回収BOXを見つけるのに苦労します。リサイクルに協力したいと思っていただいた時に参加いただけるよう、もっと積極的に数を増やしていきたいですね」。 

その一方で、広報活動によりビールカップリサイクルの認知度は確実に上がってきたと感じているそうです。「たとえば、阪神タイガースの近本光司選手をプロジェクトの"PR大使"に任命しまして、ファンのみなさんへ向けて様々な発信をしています。外周の看板やポスターのほか、試合の合間に大型ビジョンで近本選手から分別回収の呼びかけもしており、みなさんには"eco活動"を好意的に受け止めていただけているように思います」。

サイネージ

ビールカップが、アルプススタンドのラバーフェンスに転生!

球場

次は、こうして回収されたビールカップに待ち受ける、"第二の人生"について探ってみましょう。「意外に思われるかもしれませんが、アルプススタンドのラバーフェンスの中材に、プラスチックカップ由来のリサイクルポリエステル原料が使われているんですよ」と重森さん。採用されたのは2023年のシーズンからで、球場設備にビールカップのリサイクル素材が使用されるのは、球界初のことだといいます。「これは帝人フロンティア様の技術協力を得て実現したものです。同社の高度な繊維技術を用いることで、従来難しかった回収プラカップの繊維へのリサイクルが可能になり、ラバーフェンスのクッション材へと生まれ変わらせることができました」。ビール片手に声援を送るファンの想いが、"全力で白球を追う選手たち"を守るフェンスへと、カタチを変えたというわけですね。 

甲子園から阪急西宮ガーデンズへ。グループ内を巡る"循環型リサイクル

外観

ゴミ袋

ビールカップの転生先は、ラバーフェンスだけではありません。阪神甲子園球場はオフィシャルエコパートナーである株式会社シモジマとともに、「リサイクルごみ袋」を開発し、2022年のシーズンから同球場での使用を開始。このリサイクルごみ袋は、甲子園球場がある兵庫県西宮市の"指定事業系ごみ袋"としても承認されています。 

球場内で回収したビールカップ由来のごみ袋を、再び球場内で使用する。これは、『循環型リサイクル』と呼ばれるものです。
実はこの"循環"は球場内だけでなく、阪急阪神グループ内でも行われているそう。「阪急西宮ガーデンズでも、2022年からこのごみ袋が使われています」と聞き、さっそく現地を訪ねてみました。

阪急西宮ガーデンズでは、館内の共用部に合計157個の"可燃ごみBOX"が設置されており、そのすべてに「リサイクルごみ袋」が取り付けられています。回収するごみの量は「年間約79t」と膨大で、阪急西宮ガーデンズでは2~3カ月ごとに約2万枚のごみ袋を購入するのだそうです。
担当者によると、コスト的にはリサイクルごみ袋の方が少々高いとのこと。それでも、この"循環型リサイクル"に取り組む意義は大きいといいます。まずはガーデンズで働く従業員から意識が変わり、今後は来館されるお客様へと環境保護への想いを伝えていきたいと話されていました。 
 

清掃員

ゴミ袋

これからの『KOSHIEN"eco"Challenge』を、ファンの方々とともに! 

最後に、阪神甲子園球場の重森さんに、プロジェクトにおける今後のビジョンについて聞いてみました。「プロジェクトを盛り上げていくためには、より多くの方々に私たちの取り組みを知っていただく必要があります。啓発のためのPR活動に力を入れつつ、回収BOXの増設も着実に進めていこうと考えています。それと同時に、オフィシャルエコパートナーである企業様との連携も、さらに深めていきたいですね。その中で、もっと新しいアイディアを生み出し、ファンの方々の協力を得ながら、"循環型リサイクル"を当たり前にしていければと思っています」。 

野球観戦をより熱くする、よく冷えたビール。あなたが手にしたビールカップがリサイクルされ、地球の環境保全に一役買っているなんて、ちょっと素敵だと思いませんか? 

サステナビリティ

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