TNFD提言に基づく情報開示

当社グループは、自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなる「豊かなまちづくり」に向けた取組として、自然環境・生物多様性の保全につながる活動をグループ全体で推し進めてきました。また、2025年3月に公表した「長期経営構想」において環境分野の取組の方向性の一つとして「緑化や自然保護による地域の魅力向上」を掲げています。
今回、当社グループの事業における自然資本・生物多様性への依存・影響、リスク・機会を適切に把握するため、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)」のフレームワークに沿って、ダブルマテリアリティの考え方で分析・評価を実施しました。
当社では、TNFDが推奨している「LEAPアプローチ」に沿って、自然資本・生物多様性に関するリスク及び機会の分析・評価を実施しています。
具体的な当社における分析ステップ

①ガバナンス
ガバナンスについては、気候変動と同様の体制・仕組みを構築しています。
②戦略
評価対象の設定(各コア事業の依存・影響の評価及び事業の絞り込み)
ENCORE※ツールにより、当社グループのコア事業について、自然への依存や影響を評価しました。その結果に加え、事業規模や直接操業拠点での自然との接点を踏まえ、都市交通事業・不動産事業・エンタテインメント事業(以下、当該3事業を「対象事業」といいます。)を対象に、さらなる分析を進めました。
※ENCORE:国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)等により開発された、事業活動の自然への依存や影響の大きさを把握するためのツール
当社グループの自然への依存・影響の内容

自然との接点の洗出し(対象事業の拠点の評価)
対象事業について、㈱シンク・ネイチャーのデータベース※等により、国内及び海外の事業拠点(約500拠点)の位置情報に基づき、その周辺にある自然の状態等を生物多様性の重要度(保全優先度)及び生態系の完全性(自然度)の観点から評価しました。その結果、多くの事業拠点が集中する京阪神地域において、同地域で運行する阪急電鉄や阪神電気鉄道の沿線や不動産施設の周辺は、都市部にあり自然度は低いものの、保全上の重要性が高いエリアが多いことが分かりました。また、エンタテインメント事業の拠点がある六甲山や、能勢電鉄の沿線周辺は、自然度が高いことが分かりました。
※グローバルで公開されている文献等の生物多様性・自然資本データと、それらを用いた機械学習により予測した空間データからなる独自のデータベース
分析拠点のマップ

出典:Natural Earth(naturalearthdata.com)

保全優先度と生態系の完全性の傾向

自然への依存・影響及びリスク・機会の特定・評価
ENCOREツールで特定した対象事業と関係の深い生態系サービスや自然への影響要因について、これらの空間データ(地図情報)を事業拠点と重ね合わせて分析し、拠点周辺の生態系サービスの健全性・豊かさ及び人間活動が自然に与える影響の深刻さを定量的に評価しました。その結果、自然災害を緩和する生態系サービス(降雨調整や洪水緩和など)への依存度が高い各事業の拠点の一部が、これらの機能が十分ではない地域に位置していることが分かりました。また、生態系の攪乱や外来種の侵入について自然環境への影響度が高いことが分かりました。さらに、依存・影響の評価結果を踏まえ、TNFDのフレームワークで例示されている分類に従って、科学研究論文や報告書、報道等による事例を考慮のうえ、対象事業ごとに想定される主な事業リスク・機会を整理しました。

【リスク・機会への主な対応】
物理的リスクについては、鉄道事業において、線路脇で土砂崩れが発生する危険性の高い箇所について、斜面の崩壊や落石の防止、排水機能の強化等の対策工事や、雨量計の増設等を実施しているほか、河川の氾濫による車庫及び車両の浸水被害を回避するため、車両避難計画等の浸水対策を進めています。
また、移行リスクについては、都市交通事業及び不動産事業の新規開発を行うにあたって、開発敷地内に保存・保全すべき樹木・樹林等の自然環境の有無を確認し、必要に応じて保存・保全等を行っています。また、植栽の配置及び樹種の選定については、開発地区の自然と調和するように工夫しています。なお、廃棄物削減や水資源の有効活用の取組については、「資源循環(Resource recycling)」をご参照ください。
機会については、エンタテインメント事業において、六甲山の自然や眺望等の魅力をお客様に訴求することで、同山上のレジャー施設の集客拡大を目指しています。また、不動産事業において、後述のとおり、大阪梅田ツインタワーズ・サウスやグラングリーン大阪の開発により、都市の中に自然を感じられる空間をつくりだし、施設の魅力や快適性を向上させるとともに、多くの人が集う賑わいの創出にもつなげています。さらに、分譲マンションブランド〈ジオ〉では、都市の中に自然を積極的に取り込み、人と生き物が共生できる豊かな環境を創出することで、物件の付加価値の向上に取り組んでいます。
優先地域における詳細な分析・現状の取組
自然との接点の洗出しの結果や、京阪神地域の当社グループの主な拠点における緑量の変化の分析などを踏まえ、自然度の高い六甲山の所在する神戸から、当社の重要拠点が集積し、保全優先度が高い大阪梅田にかけての阪神エリアを、当社グループの優先地域として設定しました。さらに、重要拠点となる六甲山及び大阪梅田については、植生状況や植栽の生態系に与える効果等を詳細に分析しました。六甲山及び大阪梅田における分析結果は、次のとおりです。
(分析結果・特徴)
六甲山地区における当社グループの所有地について、1990年から現在までの衛星画像等を用いて、機械学習モデルにより緑量の経年変化や植生状況を評価しました。その結果、1990年以降、所有地全体において緑地が増加傾向にあり、特に人工林エリアでは増加傾向が顕著に現れていました。また、植生としては、アカマツのほか、広葉樹を中心とした多様な植生が形成されていることが分かりました。緑地の増加は、野生動植物の生息地を増やして生物多様性の保全に寄与するとともに、植生によるCO₂吸収をはじめ、土壌流出防止や局所的な気候調整等による自然災害緩和機能など、多様な生態系サービスの向上にもつながっていると考えられます。さらに、当該地域で広い面積を占めるアカマツ林は、野生生物にとっての重要な生息地とされ、各地でオオタカなどの希少生物の利用が確認されています。
六甲山(当社グループ所有地・人工林エリア)の緑量の変化

六甲山(当社グループの所有地)の植生状況

(分析結果・特徴)
大阪梅田地区の不動産物件のうち、大阪梅田ツインタワーズ・サウス及び当社グループが事業者 JV として参画した「グラングリーン大阪」について、植栽情報に基づき周辺の生物に与える効果として、鳥類やチョウ類の種の平均捕捉率※1や個体増加率※2を推計・分析しました。その結果、種の平均捕捉率は、鳥類・チョウ類共に高く、地域の在来種を呼び込む効果があると評価されました。また、個体増加率については、チョウ類が大幅に増加していると評価されました。両施設では、後述のとおり在来種を中心に植栽を行っており、その取組が周辺の生態系にポジティブな効果をもたらしていることを確認しました。
| 大阪梅田ツインタワーズ・サウス | ||
| 平均捕捉率 | 個体増加率 | |
| 鳥類 | 37.0% | 0.1% |
| チョウ類 | 81.3% | 56.9% |
| グラングリーン大阪 | ||
| 平均捕捉率 | 個体増加率 | |
| 鳥類 | 43.5% | 0.4% |
| チョウ類 | 95.8% | 108.3% |
(注)鳥類は、餌資源や利用する環境の幅が大きいため、種数・個体数に対する植栽の効果がチョウ類よりも限定的であった可能性が考えられます。
※1 平均捕捉率:物件周辺5km圏内に生息する鳥類・チョウ類のうち、物件に植栽した樹種を利用する種の割合
※2 個体増加率:物件周辺1km圏内に生息する鳥類・チョウ類の個体数が、植栽によってどの程度増加したかを示す指標
③リスクと影響の管理
リスクと影響の管理については、気候変動と同様の体制・仕組みを構築しています。
④指標と目標
当社グループでは、生物多様性の向上への取組が事業に与えるプラスの効果を把握するため、緑化・自然保護・生物多様性の保全の推進が、人の健康や心の豊かさ・地域の価値向上につながることをモニタリングする、以下の指標を掲げています。なお、TNFDで開示が推奨されている指標のうち、温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)、廃棄物の指標と目標については、非財務KPI(グループ共通)をご参照ください。また、廃棄物・化学物質・水資源等については、サステナビリティデータブックに実績を開示しています。
| 指標 | 目標 |
| 沿線住民へのアンケートを通じた、自然の豊かさによる地域の魅力度 | モニタリングを実施 |
| 特定地域(大阪梅田・六甲山など)の植物種数/生物種数 | モニタリングを実施 |
TNFDの枠組みに基づき、当社グループの事業活動と自然環境との関わりを分析することで、自然資本の充実につながる取組を進めることが当社グループの事業にとってもプラスの影響を与えることが分かりました。今後も自然環境の状況・変化をモニタリングしながら、当社グループの事業基盤となる地域の価値向上につながる取組を進め、ネイチャーポジティブに貢献してまいります。
(2025年10月現在)