⑤ 環境保全の推進
取組方針
脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。
ともに創ろう。澄みわたる未来と、心はずむ暮らしを
いま、気温上昇や自然災害の増加、生態系の異変など、地球環境が変化しつつあり、
暮らしに影響が出始めています。
その中で、私たちが、今までもこれからも大切にしたいこと。
それは、このまちに住む人や訪れる人が、
“心はずむ喜び“と”環境との調和“を感じられる暮らしを、
未来にわたり実現していくことです。
住む、楽しむ、働く、移動する・・・
生活の様々な瞬間とつながる私たちのサービスを
もっと、ずっと、環境に配慮していく。
利用するたび、心地よさやワクワクはもちろん、
環境との調和、未来への貢献を実感し、また利用したくなる。
そして、自分らしい選択と環境への配慮がどんどん積み重なって、
未来がもっと澄みわたる。
そんな、人と、環境と、未来とのつながりを感じられるまちを、
皆さまと、ともに創り、歩んでいきたいと考えています。
当社グループでは、「環境基本理念」及び「環境基本方針」を制定しています。
環境基本理念
阪急阪神ホールディングスグループは、
よりよい地球・生活環境を次世代に引き継ぐため、
事業活動による環境負荷を継続的に低減するとともに、
良質な商品・サービスを提供し、
お客様に選ばれ続けることで、
人々がサステナブルな行動を自然と選択できる社会の実現を目指します。
環境基本方針
以下の方針に基づき、環境保全に向けた取組みを実施し、継続的に改善してまいります。
- エネルギーを効率的に利用するとともに、社会全体の脱炭素化を推進し、カーボンニュートラルに貢献します。
- 地域の魅力向上につながる緑化、自然保護及び生物多様性の保全を推進します。
- 省資源、廃棄物削減及びリサイクルを促進するとともに、より質の高いリサイクルに努めます。
- お客様による環境貢献活動への参加機会の提供や、コミュニティ形成の促進に貢献します。
- ステークホルダーとのエンゲージメントを通じ、社会の環境負荷低減に努めます。
- 事業の環境に対する影響及び環境負荷※を把握し、開示するとともに、重要な項目については削減目標を設定のうえ、低減に努めます。
- 環境法令及び国内・国際社会の環境に対する要請を正しく理解し、それを遵守します。
- 従業員が、事業活動による環境負荷を理解し、環境基本理念及び環境基本方針に沿って行動するよう、意識向上に努めます。
※エネルギー、廃棄物、水使用量、大気汚染・水質汚染、化学物質・有害物質、騒音・振動等
グループ各社においては、このグループ共通の環境基本理念・環境基本方針のもと、必要に応じ各社・各事業の特性に応じて個別に環境理念・環境方針などを定め、環境保全活動を推進しています。
推進体制
当社グループでは、環境委員会(委員長:阪急阪神ホールディングス社長)を設置し、グループ全体で環境活動を推進しています。環境委員会は、各コア事業の環境保全活動を統括し、グループ各社はコア事業単位での環境保全活動を推進します。

非財務KPI
| 指標 | 目標値 | 範囲 |
|---|---|---|
| CO₂排出量の削減率 ※スコープ1・2 |
2013年度比▲46%(2030年度) | 当社及び子会社の国内事業所 |
| 温室効果ガス(GHG)排出量の削減率 ※スコープ1・2 |
2019年度比▲60%(2035年度) 実質ゼロ(2050年度) |
当社及び連結子会社 |
| 電力の再エネ比率 | 90%以上(2035年度) | 国内のみ |
| 産業廃棄物排出量(建設受注工事を除く。)の 連結売上高比率 |
2023年度比▲10%(2030年度) | 当社及び連結子会社 |
具体的な取組の方向性
①CO₂など温室効果ガスの排出量の削減
- <カーボンニュートラルの実現に向けて>
- 当社グループでは、2050年カーボンニュートラルに向けて、2050年度の温室効果ガス排出量の目標を「実質ゼロ」と定めています。具体的には、鉄道における省エネルギー性能の高い車両の導入・更新をはじめとしたエネルギー使用量の削減を進めるほか、太陽光発電の設置などの再生可能エネルギーの導入、環境配慮型建物(グリーンビルディング)の拡大を推進することなどにより、CO₂排出量の削減に取り組んでいます。
- 取組事例
<鉄道事業におけるカーボンニュートラル運行> - 2025年4月から、阪急・阪神全線の列車運行及び駅施設等で使用するすべての電力を実質的に再エネ由来の電力とし、CO₂排出量ゼロで運行しています。この取組により、年間約20万tのCO₂排出量削減を見込んでいます(2023年度実績換算)。さらに、阪急電鉄では、コーポレートPPAを活用して追加性のある再エネ電力を導入しており、阪神電気鉄道でも、2026年度から導入予定です。
-
カーボンニュートラル運行を記念するラッピング列車
(左:阪急電鉄、右:阪神電気鉄道)
- <環境負荷の低い交通ネットワークの形成>
- 鉄道は、自家用乗用車に比べ、輸送量あたりのCO₂排出量が約1/7と、環境負荷の低い交通機関です(特に、阪急電鉄・阪神電気鉄道は、都市部を走っているため約1/8)。公共交通の利便性が向上することで、自家用乗用車の利用が抑制されれば、我が国における運輸部門のCO₂排出量が削減されます。当社グループでは、阪神なんば線や北大阪急行電鉄の延伸に代表されるような鉄道ネットワークの拡充に今後も努めるとともに、バス・タクシーはもちろんのこと、レンタサイクル・駐輪場などの自転車の利用環境の充実を通じて「駅まで」や「駅から」の交通手段をより便利にし、公共交通を軸とした環境負荷の低い交通ネットワークの形成に取り組んでいます。
鉄道を核とした安全・安心で利便性の高い公共交通ネットワークを構築し、お客様に鉄道をご利用いただくことにより、同じ距離を自動車で移動した場合と比較してCO₂排出量を抑制でき、削減貢献量※を拡大させていくことができると考えており、「鉄道事業(阪急・阪神)の温室効果ガス排出削減貢献量」をモニタリングKPIとして設定しています。
※削減貢献量:製品・サービスの普及を通じ、企業が社会全体のCO₂を含む温室効果ガス排出削減にどれだけ貢献したかという“貢献量”を定量的に評価しようという考え方。温室効果ガス排出抑制の考え方の一つ
-
※神戸高速線の着色部分は阪急電鉄又は阪神電気鉄道の乗り入れ区間
- 取組事例
<阪神タイガースファーム本拠地「ゼロカーボンベースボールパーク」> - 2025年3月、阪神タイガースのファーム施設を尼崎市・小田南公園へ移転し、「ゼロカーボンベースボールパーク」として開業。「日鉄鋼板 SGLスタジアム 尼崎」、タイガース練習場、室内練習場、選手寮兼クラブハウス「虎風荘」を新設しました。
「ゼロカーボンベースボールパーク」では、太陽光発電・蓄電池の導入や廃棄物発電の活用、省エネ徹底による「脱炭素化」、ペットボトル・プラスチックカップの回収・リサイクルや雨水・井水の活用といった環境に配慮した取組を行っています。
なお、「日鉄鋼板 SGLスタジアム 尼崎」はZEB Oriented ※1認証を、「室内練習場・虎風荘(1階部分)」はNearly ZEB ※2認証を、野球施設としては初めて取得。また、「ゼロカーボンベースボールパーク」は、環境省の「第1回脱炭素先行地域※3」に選定されています。
※1 延べ面積が10,000㎡以上の建物で、基準一次エネルギー消費量から40%または30%(建物用途による)以上のエネルギー消費量削減に適合した建築物に与えられる認証
※2 基準一次エネルギー消費量から75%以上のエネルギー消費量削減に適合した建築物に与えられる認証
※3 2050年カーボンニュートラルに向け、先行的な取組により、家庭や店舗・ビル等(民生部門)での電力消費に伴うCO₂排出量を実質ゼロにすることなどを実現する地域として、環境省が選定するもの
-
ゼロカーボンベースボールパーク
②エネルギー効率の改善(省エネの推進)
- 取組事例
<鉄道・駅における省エネルギーの取り組み> - 当社グループでは、エネルギー使用において、鉄道の運行に係るエネルギーが約40%を占めるため、鉄道の運行における省エネの取組を重要視しています。例えば、阪急電鉄・阪神電気鉄道では、車両機器メーカーとの開発協議などを行いながら、省エネ性能の高い車両の導入や更新に注力しており、最新の省エネ性能が最も高い車両において、モーターに全閉式高効率主電動機を用いた高効率のVVVFインバータ制御装置のほか、前照灯を含むすべての照明機器にLED照明を採用し、従来型車両と比較して約60%の消費電力削減を実現しています。また、車体重量を軽くし、より少ない電力で運行できるよう、従来の鋼製車両に比べて軽量化を図ったアルミ車両やステンレス車両の導入を進めています。
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阪急電鉄 省エネ車両 -
阪神電気鉄道 省エネ車両
- 取組事例
<エネルギー効率を測定するビル管理システムの活用> - 大阪梅田ツインタワーズ・サウスでは、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)によりエネルギー使用量・効率を「見える化」してビル設備の省エネ運転・制御に役立てているとともに、発電効率の高い「コージェネレーションシステム」、建物の外部に近いゾーンから執務室にかけて段階的な温度設定を自動的に行う「シークエンス空調」、デシカント(乾燥剤)で空気中の湿度をコントロールすることにより空気環境を整える「デシカント空調」等により、快適性を維持しながら省エネを促進しています。
また、当ビルではテナントも貸室内の日ごと・時間ごとのエネルギー使用量をWEB上で確認でき、トレンドや対前年比較等のグラフ化も可能な、一歩進んだ「見える化」システムを実現しています。これにより、テナントの省エネ意識の向上を助け、日々の省エネ活動が行える仕組みを構築しています。
-
大阪梅田ツインタワーズ・サウス
- 取組事例
<EVバスの導入・エコドライブの推進> - 阪急バスでは、2021年10月から大阪大学学内連絡バスと して2両のEVバスを導入しました。現在では千里営業所管轄路線で2両、茨木営業所管轄路線で12両、猪名川営業所所管で4両運行しています。阪神バスでも、2023年5月からEVバス2両の運行を開始し、現在では合計6台運行しています。これは兵庫県内の乗合路線バスとしては初の事例となります。阪急バス・阪神バスをはじめとしたグループ各社では、従業員への教育をはじめ、アイドリングストップ装置のついた車両の導入やエコドライブコンテストの開催など、様々な取組を通じて、エコドライブを推進しています。
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阪急バス -
阪神バス
③再生可能エネルギー(太陽光発電など)の活用
- 取組事例
<太陽光発電の設置> - 当社グループの各施設では、再生可能エネルギーの活用として、太陽光発電設備の設置を進めています。主な設置施設は以下のとおりです。
● 都市交通事業:阪神大石駅、阪神大物駅、阪神杭瀬駅、阪神尼崎センタープール前駅、阪急摂津市駅、阪急西宮北口駅、阪急正雀車庫
● 不動産事業:HEPファイブ、阪急西宮ガーデンズ、大阪梅田ツインタワーズ・サウス、Hankyu Hanshin Logistics Centre(シンガポール物流倉庫のオンサイトPPA)
● エンタテインメント事業:阪神甲子園球場、ゼロカーボンベースボールパーク(日鉄鋼板 SGLスタジアム 尼崎、室内練習場、選手寮兼クラブハウス「虎風荘」)
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阪神甲子園球場 -
阪急西宮北口駅 -
Hankyu Hanshin Logistics Centre
- 取組事例
<再生可能エネルギー由来の電力の導入> - 2022年4月に大阪梅田ツインタワーズ・ノース/サウスの両ビルにおいて、実質的に再生可能エネルギー由来の電力を導入※1しました。対象物件を拡大し、2025年度には大阪梅田地区及び阪急阪神沿線で運営するオフィスビル・商業施設等※2における電力使用量※3の大部分を実質的な再エネ電力に置き換えました。
※1 共用部とオフィス専用部の双方に導入。
※2 建替・再開発予定の物件、使用電力が極めて小さい物件、当社グループがエネルギー管理権原を有しない物件など、一部の物件を除く。
※3 ガスコージェネレーションシステムによる自家発電分を除く。
④環境配慮型建物(グリーンビルディング)の拡大
当社グループは、環境・社会への配慮がなされた不動産に対して付与される認証の取得を推進し、環境へ配慮した建物の拡大に取り組んでいます。
| 認証名・評価内容 | 施設名 | |
|---|---|---|
| DBJ Green Building認証〈5段階評価〉 | ||
| ★★★★★(5つ星) 国内トップクラスの卓越した 「環境・社会への配慮」がなされた建物 |
![]() |
大阪梅田ツインタワーズ・サウス 阪急西宮ガーデンズ HEPファイブ |
| ★★★(3つ星) 非常に優れた 「環境・社会への配慮」がなされた建物 |
神戸三宮阪急ビル | |
| CASBEE不動産評価認証 | ||
| Sランク(最高位) 一般社団法人⽇本サステナブル建築協会(JSBC)、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が中心に開発・運営する、不動産評価の際に使用するための環境評価の結果で、最高位ランクを取得した建築物 |
ロジスタ・ロジクロス茨木彩都 A棟 B棟 |
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| CASBEE大阪(大阪市建築物総合環境評価制度)〈5段階評価〉 | ||
| Sランク(最高位) 室内環境の快適性、建築物の長寿命化、景観への配慮などを含め、建築物の総合的な環境性能で最高位ランクを取得した建築物 |
大阪梅田ツインタワーズ・ノース | |
| ZEB | ||
| ZEB Ready 快適な室内環境を保ちながら高効率設備などにより省エネルギーに努めることで、同規模の標準的な設備仕様の建築物と比較し、一次エネルギーの年間消費量が大幅に削減されている建築物。削減量に応じて、「ZEB」、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4つに定義される。ZEB Readyは、50%以上の一次エネルギー消費量を削減した建築物 |
ロジスタ・ロジクロス茨木彩都B棟 ロジスタ京都上鳥羽 |
|
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HEPファイブ -
神戸三宮阪急ビル
⑤廃棄物発生の抑止およびリサイクルの推進
- 取組事例
<阪神甲子園球場における他社・行政との協働によるプラスチックカップリサイクル> - 阪神甲子園球場では、「KOSHIEN “eco” Challenge」の一環として、「廃棄物発生の抑止とリサイクルの推進」を掲げ、さまざまな取組を推し進めています。生ビールなどの販売に使用し、お客様のご協力により回収したプラスチックカップを、帝人フロンティア株式会社や株式会社シモジマと協働し、ビアカップホルダーなどのノベルティ・ごみ袋・球場ラバーフェンス(クッション材)の原材料の一部としてリサイクルし、同球場で使用するという循環型の取組を導入しています。さらに、行政指定のごみ袋としての使用を認められたことで、同球場外に使用を拡大するなど、行政との連携により資源利用の削減を推進しています。
-
専用回収カート -
プラスチックカップ
- 取組事例
<PETボトルの水平リサイクル> - 当社グループでは、株式会社サーキュラーペットやアサヒ飲料株式会社等と協働し、使用済みPETボトルから再生PET樹脂を製造し、PETボトルにリサイクルする水平リサイクルプロジェクト「ボトルtoボトル」の取組を行っています。実施拠点は、阪急電鉄駅施設(主に飲料自動販売機横のリサイクルボックス)、HEPファイブ、アプローズタワー(ホテル阪急インターナショナルを含む。)、宝塚大劇場、阪神甲子園球場(夏の高校野球選手権大会)等、多岐にわたります。
この取組により、リサイクルされない場合と比較してCO₂排出量を約40%削減することができるため、資源の有効活用及び環境負荷の低減が期待できます。今後も取組拠点の拡大を図り、資源の活用をより一層推進していきます。
- 取組事例
<ホテル事業におけるプラスチック削減の取り組み> - 阪急阪神ホテルズでは、「プラスチック資源循環促進法」に基づき、客室内にご用意している一部使い捨てアメニティーをフロントロビーでの提供※に変更しています。お客様が必要とする分だけをお取りいただくことによる「ごみの排出量の削減」のほか、「環境に害のある物質をなるべく削減」するために、プラスチック素材のアメニティーアイテムの軽量化や環境に配慮した商品に順次切り替えています。
※第一ホテル東京、ホテル阪急インターナショナルは客室内に設置しています。
グループ各社における具体的な取り組みについては、各社WEBサイトをご覧ください。
- エンタテインメント事業





